目次
メタ認知方略の使用状況
中程度
問題解決方略が最も頻繁に使用
読書動機
高い水準
ユーモア/漫画書籍への嗜好
読解力パフォーマンス
平均以下
サウジ人EFL学生60名
1. 序論
読解力は高等教育において最も重要な学習スキルの一つである。学術的・技術的コースでは大量の読解が要求され、学生は学業および職業上の成功のために読解内容を理解する必要がある。サウジアラビアでは、TOEFL iBT®およびIELTSテストレポートが示すように、読解と作文は最も発達していない言語スキルである。この不足は、学生の英語読解活動への限定的な接触、および読書への関心と動機付けの低さに起因すると考えられる。
2. 文献レビュー
2.1 メタ認知リーディング方略
メタ認知リーディング方略とは、読書中の認知プロセスに対する意識的認識と制御を指す。Flavell(1979)のメタ認知理論が基盤を形成し、読者の読解を監視、制御、調整する能力を強調している。読解方略のメタ認知意識インベントリ(MARSI)は、グローバル読解方略(GLOB)、問題解決方略(PROB)、支援的読解方略(SUP)の3つの主要カテゴリーを特定している。
2.2 読書動機理論
読書動機は、個人が読書活動に従事することを駆り立てる信念、価値観、目標を含む。自己決定理論(Deci & Ryan, 1985)は、内発的動機付け(楽しみのための読書)と外発的動機付け(外部報酬のための読書)を区別する。読書動機質問紙(MRQ)は、自己効力感、好奇心、没頭、承認など、読書動機の様々な側面を測定する。
2.3 読解モデル
読解は、テキストとの相互作用を通じて意味を構築することを含む。読解の単純視(Gough & Tunmer, 1986)は、読解が解読と言語理解の積に等しいと仮定する:$RC = D \times LC$。構築-統合モデル(Kintsch, 1998)などのより最近のモデルは、読解の相互作用的な性質を強調している。
3. 研究方法
3.1 研究デザイン
本研究は、メタ認知リーディング方略、読書動機、読解力パフォーマンス間の関係を調査するために、記述調査法と記述的相関法を採用した。
3.2 調査対象者
本研究は、サウジアラビアの全寮制男子国立工業大学から無作為に選ばれた60名のサウジ人大学生レベルのEFL学習者を対象とした。代表性を確保するために、無作為抽出法を用いて参加者を選出した。
3.3 調査手法
3つの主要な手法を使用した:メタ認知意識を測定するための読解方略調査(SORS)、読書動機を評価するための読書動機質問紙(MRQ)、読解パフォーマンスを評価するための標準化された読解テスト。
3.4 データ分析
データは、記述統計(平均値、標準偏差)と推測統計(t検定、相関分析)を用いて分析された。有意水準はp < 0.05に設定された。
4. 結果
4.1 統計分析
本研究は、回答者が学術テキストを読む際に様々なメタ認知リーディング方略を中程度に使用することを明らかにした。3つのカテゴリーの中で、問題解決方略(PROB)が最も頻繁に使用された。回答者は読書に対する高い動機を示し、特にユーモア/漫画書籍への嗜好が認められた。
4.2 相関関係の知見
t検定分析を用いて、メタ認知リーディング方略と読解力の間に有意な相関は見られなかった(r = 0.18, p > 0.05)。読書関心/動機と読解力の間にも有意な相関は見られなかった(r = 0.12, p > 0.05)。しかし、読解方略と読書動機の間には正の相関が認められた(r = 0.42, p < 0.05)。
主要な知見
- サウジ人EFL学生は問題解決方略を最も頻繁に使用
- 高い動機レベルが必ずしも優れた読解力に結びつくわけではない
- 文化的・教育的文脈が読解成果に大きく影響
- 従来の読解方略指導には文脈に応じた適応が必要な可能性
5. 考察
本研究の知見は、メタ認知方略、動機、読解力の間に通常正の相関を示す先行研究と矛盾する。この不一致は、文化的要因、教育的文脈、または測定手法に起因する可能性がある。英語読解活動への限定的な接触と読書に対する異なる文化的態度を特徴とするサウジアラビアの教育的文脈が、これらの予想外の結果を説明するかもしれない。
6. 技術分析
独自分析
本研究は、第二言語読解研究における確立された理論に挑戦する興味深い知見を提示する。サウジ人EFL学生におけるメタ認知方略と読解力パフォーマンス間の相関の欠如は、有意な正の関係を発見したCarrell(1998)やZhang(2001)を含む多数の先行研究と矛盾する。この不一致は、サウジアラビアの教育環境に特有の文化的・文脈的要因によって説明される可能性がある。National Reading Panel(2000)の研究によれば、効果的な読解指導には通常明示的な方略指導が含まれるが、本研究は特定の文化的文脈では従来のアプローチに大幅な適応が必要であることを示唆している。
読解力とその予測変数間の数学的関係は、重回帰分析を用いて表現できる:$RC = \beta_0 + \beta_1MS + \beta_2RM + \epsilon$。ここでRCは読解力、MSはメタ認知方略、RMは読書動機、$\epsilon$は誤差分散を表す。本研究では、係数$\beta_1$と$\beta_2$は統計的に有意ではなかった。これは、この特定の文脈では他の測定されていない変数がより影響力を持つ可能性を示唆している。
UNESCO全球教育監視報告書(2021)で引用されているような類似文脈からの研究との比較分析は、読解力の成果が社会経済的要因、教育政策、読書に対する文化的態度に大きく影響されることを明らかにしている。本研究で観察された高い動機付けだが低い読解パフォーマンスは、学生が英語学習に対して前向きな態度を示すものの、限定的な本物の言語接触と暗記学習法への依存により学業成績に苦労する他の湾岸諸国からの知見と一致する。
技術図表
研究方法論は、メタ認知方略と読書動機を外生変数とし、読解力を内生変数として予測する構造方程式モデルとして視覚化できる。本研究では、両予測変数から読解力への経路係数は有意ではなかった。これは、モデルに追加の媒介変数または調整変数が必要である可能性を示唆している。
コード実装
# 相関分析のためのPython擬似コード
import pandas as pd
import scipy.stats as stats
# 研究データの読み込み
data = pd.read_csv('reading_study_data.csv')
# 相関係数の計算
strategy_comprehension_corr = stats.pearsonr(
data['metacognitive_strategies'],
data['reading_comprehension']
)
motivation_comprehension_corr = stats.pearsonr(
data['reading_motivation'],
data['reading_comprehension']
)
strategy_motivation_corr = stats.pearsonr(
data['metacognitive_strategies'],
data['reading_motivation']
)
print(f"方略-読解相関係数: {strategy_comprehension_corr}")
print(f"動機-読解相関係数: {motivation_comprehension_corr}")
print(f"方略-動機相関係数: {strategy_motivation_corr}")
7. 今後の応用
今後の研究では、サウジアラビアおよび類似の教育的文脈に特化して設計された文化的に適応した読解方略指導を探求すべきである。潜在的な応用例は以下の通り:
- 文化的に応答性の高い読解評価ツールの開発
- 技術強化型読解プラットフォームの統合
- 時間経過に伴う読解発達を追跡する縦断的研究
- 他のEFL文脈との異文化間比較研究
- 語彙知識や読解流暢性などの追加変数の調査
8. 参考文献
- Flavell, J. H. (1979). Metacognition and cognitive monitoring: A new area of cognitive-developmental inquiry. American Psychologist, 34(10), 906-911.
- Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic motivation and self-determination in human behavior. Springer Science & Business Media.
- Gough, P. B., & Tunmer, W. E. (1986). Decoding, reading, and reading disability. Remedial and Special Education, 7(1), 6-10.
- Kintsch, W. (1998). Comprehension: A paradigm for cognition. Cambridge University Press.
- Carrell, P. L. (1998). Can reading strategies be successfully taught? Australian Review of Applied Linguistics, 21(1), 1-20.
- Zhang, L. J. (2001). Awareness in reading: EFL students' metacognitive knowledge of reading strategies in an acquisition-poor environment. Language Awareness, 10(4), 268-288.
- National Reading Panel (2000). Teaching children to read: An evidence-based assessment of the scientific research literature on reading and its implications for reading instruction. National Institute of Child Health and Human Development.
- UNESCO (2021). Global Education Monitoring Report: Non-state actors in education. United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization.